
『ジュラシック・ワールド』(2015年)は、 第1作『ジュラシック・パーク』で果たせなかった「開園」という夢が、ついに実現した世界を描いた作品である。
1993年の第1作では、恐竜テーマパークは開園前の試験段階で事故が発生し、 一般客を迎えることなく崩壊した。
本作は、その「もしも」を現実にした物語だ。
- 技術は成熟し
- 管理体制も整い
- 恐竜は完全に制御されているように見える
人類はついに、恐竜を娯楽として成立させたのである。
『ジュラシック』シリーズ
全体目次(総括⇒第1回〜最終章)
- 🦖 ジュラシック映画シリーズ総括編 ― 30年の進化をたどる「深化の系譜」 ―
- 「ジュラシック・パーク」が変えた映画の未来 ── 恐竜が“現実”になった日
- 「ジュラシック・パーク」/『ロスト・ワールド』が示した続編の深化──恐竜の成長と野生を描く
- 「ジュラシック・パーク III」が突きつけた対峙──恐竜と最も向き合った物語
- 「ジュラシック・ワールド」|ついに開園した夢と、失われた安全弁
- 「ジュラシック・ワールド」/『炎の王国』|恐竜と人間の“倫理”がぶつかる転換点
- 「ジュラシック・ワールド」最終章/『新たなる支配者』|人間は自然を支配できるのか
作品データ・基本情報
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 公開年 | 2015年 |
| 監督 | コリン・トレヴォロウ |
| 主演 | クリス・プラット、ブライス・ダラス・ハワード |
| 舞台 | イスラ・ヌブラル島 |
| シリーズ | ワールド三部作・第1作 |
あらすじ
イスラ・ヌブラル島では、恐竜テーマパーク 「ジュラシック・ワールド」が正式に開園していた。
恐竜は檻の中で安全に管理され、 観光客はショーやアトラクションを楽しみ、 パークは世界的な成功を収めている。
しかし、来場者の関心は次第に薄れていく。
そこで運営側は、 「より刺激的な存在」を求め、 遺伝子操作による新種恐竜を生み出してしまう。
その選択が、すべての崩壊の引き金となる。
サイトBは復活しているのか?
―『ロスト・ワールド/ジュラシック・パーク』との関係―
『ジュラシック・ワールド』には研究施設が登場するため、 「サイトBが復活しているのでは?」と感じる人もいるだろう。
ここでまず、サイトBとは何だったのかを簡単に整理しておきたい。
サイトBとは何か?
―第2作『ロスト・ワールド/ジュラシック・パーク』の舞台―
サイトBとは、 第2作『ロスト・ワールド/ジュラシック・パーク』(1997年)で本格的に描かれた島である。
- 正式名称:イスラ・ソルナ
- 恐竜の繁殖・成長・研究を行う専用施設
- 一般客は立ち入り禁止
- テーマパークの「裏側」を担う存在
第1作のイスラ・ヌブラル島が 「見せるための島」だったのに対し、 サイトBは 恐竜を育て、管理し、危険を隔離するための島 という役割を持っていた。
『ジュラシック・ワールド』でサイトBは復活しているのか?
結論から言うと、 サイトB(イスラ・ソルナ)そのものは復活していない。
しかし重要なのは、 サイトBが担っていた役割が、イスラ・ヌブラル島に統合されている という点である。
研究施設が意味するもの
『ジュラシック・ワールド』に登場する研究所では、
- 恐竜の遺伝子操作
- 行動研究
- 新種恐竜の開発
が行われている。
内容だけを見れば、 これは『ロスト・ワールド』で描かれた サイトBの研究内容とほぼ同じだ。
だが、決定的な違いがある。
サイトB時代との決定的な違い
| サイトB(第2作) | ジュラシック・ワールド |
|---|---|
| 裏方の研究島 | 観光地の中心 |
| 危険な研究は隔離 | 危険でも利益優先 |
| 研究目的 | 商品開発目的 |
かつては 「危険なことは裏でやる」 という最低限の理性が存在していた。
しかし『ジュラシック・ワールド』の世界では、 その区別が完全に消えている。
★補足コラム:サイトB(イスラ・ソルナ)の「その後」
設定上、イスラ・ソルナは 法的に保護された立ち入り禁止区域となり、 人の手がほとんど入らないまま放置された。
しかし、そこでは生態系のバランスが崩れ、 恐竜の個体数は激減していったとされている。
一部の恐竜は、 『ジュラシック・ワールド』開園にあたり イスラ・ヌブラル島へ移送されたという設定もある。
なお、今作に登場するT-レックス 通称「レクシィ」は、 第1作で暴れ回ったあの個体そのものだ。
新主人公オーウェン・グレイディ
主人公オーウェンは、 恐竜を「支配」ではなく「理解」しようとする人物だ。
ヴェロキラプトルとの関係は象徴的で、
- 完全な服従ではない
- 信頼関係による共存
という、新しい恐竜との向き合い方を示している。
★補足コラム:「安全弁」を象徴する二人
『ジュラシック・ワールド』では、 管理責任者クレアと、現場のオーウェンが 対照的に描かれている。
クレアは恐竜を 「資産(Asset)」として捉え、 数字や効率を重視する。
一方オーウェンは、 恐竜を血の通った「生き物」として扱う。
かつてサイトBが担っていた 荒々しい現場感覚は、 すでに経営の現場から切り離されていた。
★補足コラム:映像に残された「過去の影」
劇中、兄弟が迷い込む 旧ビジターセンターは、 第1作『ジュラシック・パーク』の舞台そのものだ。
最新鋭のテーマパークの裏側に、 22年前の崩壊の痕跡が そのまま残されている。
この対比は、 単なるファンサービスではない。
歴史は、忘れた頃に繰り返される
という、不穏な予兆として機能している。
まとめ|なぜ崩壊は避けられなかったのか
『ジュラシック・ワールド』は、
- 開園に成功した世界
- 技術的には完成したシステム
- それでも崩壊する現実
を描いた作品だ。
原因は恐竜ではない。 「もう安全だ」と思い込んだ人間自身である。
島は隔離できても、 人間の野心は隔離できなかった。
それこそが、 『ジュラシック・ワールド』が描いた最大の警告だ。
