
Appleは40年にわたり、「自分たちの理想を実現するためにCPUを選び続けた会社」でした。 そして2020年、その旅は一つの到達点を迎えます。
インテルとの蜜月時代の終焉、そして「Appleシリコン」への移行。
本章では、Macが歩んだ波乱万丈なCPUの歴史を辿ります。
- MotorolaからPowerPCへ:初期のMacを支えた「反逆の精神」
- 衝撃のIntel移行(2005年):ジョブズが下した、かつての敵との「禁断の提携」
- M1チップの革命:なぜAppleはインテルと別れ、自社製チップを選んだのか
- iPhoneが変えたPCの未来:モバイル技術がいかにしてデスクトップを凌駕したか
「効率」と「性能」の極限を求めた結果、Appleが導き出した答えとは。 パソコンの常識を塗り替えた、Appleとインテルの「別れの物語」を紐解きます。
- AppleのCPUの旅は“反骨”と“最適化”の歴史だった
- 68k時代(1984〜1994)──Macintoshを支えたMotorolaの名CPU
- PowerPC時代(1994〜2005)──“Intelに負けないCPUを作る”という夢
- 2005年──ジョブズが語った「Performance per Watt」
- Intel移行(2006)──Appleが“生き残るため”に選んだ決断
- iPhoneの登場(2007)──Appleが“自前のCPU”を作り始める
- Intelの10nm迷走(2015〜2020)──Appleの不満が爆発する
- Skylake品質問題(2015〜2016)──決定的な亀裂
- AppleがIntel離脱を決断(2017〜2020)──未来を他社に握られたくない
- AppleのCPUの旅は、Intelの未来を映す鏡だった
AppleのCPUの旅は“反骨”と“最適化”の歴史だった
Appleは40年にわたり、 「自分たちの理想を実現するためにCPUを選び続けた会社」 だった。
- 68k(Motorola)
- PowerPC(IBM・Motorola・Apple)
- Intel(2006〜2020)
- Apple Silicon(2020〜)
この旅は、Intelの栄光と失速、そしてAppleの独立を理解するための重要な伏線となる。
68k時代(1984〜1994)──Macintoshを支えたMotorolaの名CPU
1984年、初代Macintoshは Motorola 68000(68k) を採用した。
- CISCアーキテクチャ
- 高い表現力
- グラフィック処理に強い
- 当時のIBM PC(8088)より圧倒的に洗練された設計
Appleは 「美しいGUIを動かすには68kが最適」 と判断した。
しかし、時代はRISCへ向かい始める。
PowerPC時代(1994〜2005)──“Intelに負けないCPUを作る”という夢
1994年、AppleはIBM・Motorolaと共同で PowerPCアーキテクチャ を立ち上げる。
- RISCベース
- 高効率
- 当時のPentiumより高性能
- Macの差別化ポイントとして機能
さらにAppleは、 「Fat Binary(ファットバイナリ)」 という仕組みで 68kとPowerPCの両方で動くアプリを実現し、 “移行のプロ”としての技術力を見せつけた。
しかし、PowerPCには致命的な問題があった。
- ノート向け低消費電力版が作れない
- 発熱が高い
- IBMの開発速度が遅い
- ソフトウェア互換性が弱い
そして決定的だったのは、
PowerPC G5はノートPCに載せられない。
Appleは未来を失い始めていた。
2005年──ジョブズが語った「Performance per Watt」
2005年のWWDC。 スティーブ・ジョブズは壇上でこう語った。
「PowerPCはワットあたり性能(Performance per Watt)でIntelに勝てない。」
これは単なる技術比較ではなく、 Appleが未来を選ぶための宣言 だった。
そしてこの言葉は、 15年後にAppleがIntelを捨てる理由と完全に一致する。
「ワットパフォーマンスでIntelに勝てない」 → 「ワットパフォーマンスでIntelを捨てる」
歴史は美しいリフレインを描く。
Intel移行(2006)──Appleが“生き残るため”に選んだ決断
2006年、Appleはついに PowerPCを捨て、Intelへ移行する と発表する。
理由は明確だった。
- IntelのCoreアーキテクチャが圧倒的に高性能
- 省電力化が進んでいた
- ノートPC時代に最適
- Windowsとの互換性が得られる(Boot Camp)
特に Boot Camp は革命的だった。
- MacでWindowsが動く
- 日本の大学生・ビジネス層でMac普及が加速
- 日本市場の“世界標準化”の流れとも一致
Intel移行はApple史上最大の成功のひとつとなった。
しかし、この成功が 後の“Intel離脱”の伏線 になる。
iPhoneの登場(2007)──Appleが“自前のCPU”を作り始める
2007年、iPhoneが登場。 Appleは ARMベースの独自SoC(Aシリーズ) を開発し始める。
- A4(2010)
- A6(2012)
- A7(2013:世界初のスマホ向け64bit)
- A10 Fusion(2016)
- A12 Bionic(2018)
特に A7の64bit化 は世界を震撼させた。
- Intelはまだスマホ向け64bitを持っていなかった
- Qualcommは「64bitはマーケティングだ」と発言して後に撤回
- 世界中の半導体メーカーがAppleの先行に驚愕
「スマホが64bit?Intelより先に?」
AppleはモバイルCPUでIntelを追い抜き始めていた。
Intelの10nm迷走(2015〜2020)──Appleの不満が爆発する
この頃、Intelは深刻な問題に直面する。
- 10nmプロセスが5年以上遅延
- Skylake世代で品質問題(スリープ復帰バグなど)
- 発熱と消費電力が改善しない
- モバイル向けCPUの革新が止まる
一方Appleは、TSMCと共に 7nm → 5nm と順調に微細化を進めていた。
- A12(7nm)
- A14(5nm)
製造技術は完全に逆転していた。
Skylake品質問題(2015〜2016)──決定的な亀裂
Appleの幹部(ジョニー・スルージー)は後にこう語っている。
「Skylakeは品質問題が多すぎた。 AppleのエンジニアがIntelより多くのバグを見つけていた。」
これはAppleにとって決定的だった。
- Intelの品質低下
- AppleのAシリーズの急成長
- 10nm遅延
- モバイル時代への適応不足
Appleはついに決断する。
AppleがIntel離脱を決断(2017〜2020)──未来を他社に握られたくない
Appleは2017年頃から “Macを自社CPUへ移行する” 計画を本格化させる。
理由は明確だった。
- Intelの遅れにMacの未来を預けられない
- AシリーズがIntelを超えた
- ARMアーキテクチャの省電力性
- iPhone/iPadとの統合が可能
- Appleがハードとソフトを完全に最適化できる
そして2020年、 Appleはついに Apple Silicon(M1) を発表する。
「MacはIntelを離れ、Apple独自のCPUへ移行する。」
これはPC史における最大級の地殻変動だった。
AppleのCPUの旅は、Intelの未来を映す鏡だった
- 68k:GUI時代の象徴
- PowerPC:Intelに対抗する夢
- Intel:ノートPC時代の最適解
- Aシリーズ:モバイル時代の勝者
- Apple Silicon:PCの未来を自分で作る決断
AppleのCPUの旅は、 Intelの栄光・停滞・そして失われた未来 を映し出している。
そしてこの旅は、 次章の 「Intelが逃した3つの巨大市場」 へとつながる。




