
簿記と聞くと、数字が多くて難しそう、借方・貸方が分からない、 そんな印象を持つ人は少なくありません。 参考書を開いたものの、専門用語が並んでいて、 どこから理解すればよいのか分からなくなった経験がある人も多いでしょう。
一方で、事務職や経理補助、総務などの仕事では、 簿記の考え方を理解していることが前提になる場面が多くあります。 数字を入力するだけでなく、 その意味を理解して処理できるかどうかが求められるからです。
この記事では、簿記3級の試験対策に入る前に、 簿記の土台となる「複式簿記」という考え方を、 これから簿記を学ぶ人でも理解できるように整理していきます。 暗記ではなく、考え方をつかむことを重視して説明します。
複式簿記の考え方が分かれば、 簿記3級は決して怖いものではありません。 次の章から、簿記の基本を順番に見ていきます。
- そもそも簿記とは何をするものか
- 簿記が扱う「取引」とは何か
- 複式簿記という考え方
- 複式簿記 初心者おすすめの本
- 簿記の流れを全体で見てみよう
- 仕訳とは何か(増減ルールの理解)
- 勘定科目という整理のルール
- 借方・貸方の考え方
- 帳簿と勘定口座の考え方
- 残高(ざんだか)の考え方
- 残高試算表(ざんだかしさんひょう)
- 決算書(けっさんしょ)とは何か
- 貸借対照表(B/S)の考え方
- 損益計算書(P/L)の考え方
- 損益計算書(P/L)の作り方
- 決算書ができるまでの4ステップ
- 決算整理の考え方と役割
- 売上原価と在庫の考え方
- 減価償却の考え方と実務の基本
- 費用と収益の見越し・繰延
- 決算整理後試算表と決算書完成まで
- 決算書を読むための基本視点
- 利益とお金はなぜズレるのか
- 簿記の5要素をもう一度整理する
- 仕訳から決算書までを一本でつなぐ
- 資格取得(日商簿記3級)を目指すなら この本
- 最終章 簿記を学ぶ意味と、次の一歩
そもそも簿記とは何をするものか
簿記とは、簡単に言えば お金やモノの動きを記録し、事業の状態を分かりやすくするための仕組みです。
日々の取引をただ記録するだけであれば、 家計簿のような方法でも対応できます。 しかし、事業や会社では、 「今どれくらいの財産があるのか」 「一定期間でどれくらい利益が出たのか」 といったことを、正確に把握する必要があります。
そのために使われているのが、簿記です。
簿記で分かる2つのこと
簿記を使うことで、主に次の2つが分かるようになります。
- 現在の財産や借金の状態
- 一定期間の収入と支出の結果
これらは、事業を続けていくうえで欠かせない情報です。 事務職や経理の仕事では、 この情報を正しく扱えるかどうかが求められます。
なぜ簿記は複雑に見えるのか
簿記が難しく感じられるのは、 取引をそのまま記録しているのではなく、 一定のルールに従って整理しているからです。
その整理の方法として使われているのが、 次の章で説明する 複式簿記 という考え方です。
まずは、 「簿記は何のためにあるのか」 「何を分かるようにするものなのか」 を押さえておくことが大切です。
次の節では、 簿記が扱う「取引」とは何かについて、 もう少し具体的に見ていきます。
簿記が扱う「取引」とは何か
簿記では、日常の出来事すべてを記録するわけではありません。 記帳の対象になるのは、取引と呼ばれるものだけです。
まずは、 簿記でいう「取引」とは何を指すのかを整理していきましょう。
簿記における取引とは
簿記でいう取引とは、 事業の状態に変化が生じる出来事を指します。
ここで重要なのは、 お金が実際に動いたかどうかは関係ないという点です。
簿記では、
- お金やモノが増えた
- お金やモノが減った
- 代金を受け取る権利や、支払う義務が発生した
といった変化があれば、 それは取引として記録の対象になります。
お金が動かなくても取引になる例
たとえば、掛けで商品を仕入れた場合を考えてみましょう。 掛けとは、商品を先に受け取り、代金の支払いを後日にする取引のことです。
この場合、
- 商品はすでに手元にある
- 現金の支払いはまだ行っていない
という状態になります。
現金は動いていませんが、
- 商品が増えている
- 代金を支払う義務が発生している
という変化が起きています。 このような場合も、簿記では取引として記録します。
なぜ取引を記録するのか
もし「お金が動いたときだけ」記帳してしまうと、
- 今、どんな財産を持っているのか
- どれくらい借金があるのか
- 本当の利益はいくらなのか
が正しく分からなくなってしまいます。
簿記では、 事業の状態を正確に把握するために、 取引が発生した時点で記録を行うという考え方を取っています。
取引では何が変化しているのか
取引が起きるとき、 必ず何かが増え、何かが減っています。
たとえば、現金で文房具を購入した場合、
- 使ったのは ⇒ 現金
- 増えたのは ⇒ 文房具
という2つの変化が同時に起きています。
簿記では、 このような変化を整理して記録することで、 取引の内容を分かりやすく残します。
この整理の方法として使われているのが、 次の章で説明する 複式簿記 という考え方です。
まずは、 簿記が「お金の記録」ではなく、 取引を通して事業の状態を把握する仕組みであることを しっかり押さえておきましょう。
次の章では、 この取引をどのように整理して記録するのか、 複式簿記の考え方を具体例とともに見ていきます。
複式簿記という考え方
前の章では、 簿記が「お金が動いたとき」だけでなく、 事業の状態が変化する取引を記録する仕組みであることを確認しました。
この取引を整理して記録するために使われているのが、 複式簿記という考え方です。
複式簿記とは何か
複式簿記とは、 1つの取引を、必ず2つの側面から記録する方法です。
取引が起きるとき、 事業の中では必ず次のような変化が同時に起きています。
- 何かが増える
- 何かが減る
複式簿記では、 この2つの変化をセットで整理し、記録します。
具体例で考えてみる
たとえば、現金で文房具を購入した場合を考えてみましょう。
この取引では、
- 使ったのは ⇒ 現金
- 増えたのは ⇒ 文房具
という2つの変化が起きています。
私たちは普段、 「文房具を買った」という一言で済ませていますが、 簿記では、その中身を分解して考えます。
なぜ2つに分けて記録するのか
もし「現金が減った」ことだけを記録すると、
- 何に使ったのか
- その結果、何が残ったのか
が分からなくなってしまいます。
複式簿記では、
- 何を使ったのか
- その結果、何を得たのか
を同時に記録することで、 取引の意味を後からでも説明できるようにしています。
複式簿記と簿記全体の流れ
この複式簿記の考え方は、 その後の簿記の作業すべての土台になっています。
具体的には、次のような流れで使われます。
- 仕訳(取引を最初に整理して書き出す作業)
- 帳簿(仕訳を項目ごとにまとめて記録するもの)
- 試算表(帳簿の内容が正しく記録されているかを確認する表)
- 財務諸表(事業の状態や成績をまとめて示す書類)
これらは別々の作業ではなく、 複式簿記の考え方をもとに、順番につながっているものです。
複式簿記 初心者おすすめの本
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| 『世界一楽しい決算書の読み方』 | クイズ形式で楽しく複式簿記の結果(決算書)を学ぶ。 | 数字アレルギーがあるが、仕組みは知りたい人。 |
| 『会計の世界史』 | 複式簿記がなぜ発明されたのか、歴史から学べる。 | 理屈から納得して進めたい知的好奇心が強い人。 |
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簿記の流れを全体で見てみよう
これまでの章では、
- 簿記は何のためにあるのか
- 何を記録するのか
- どのような考え方で整理するのか
を見てきました。
この章では、 取引が発生してから、最終的に事業の状態が分かるまでの流れを、 全体として確認していきます。
簿記は流れで成り立っている
簿記の作業は、 いくつかの段階に分かれています。
取引が発生すると、 次のような順番で整理されていきます。
- 仕訳(取引を最初に整理して書き出す作業)
- 帳簿(仕訳を項目ごとにまとめて記録するもの)
- 試算表(帳簿の内容が正しく記録されているかを確認する表)
- 財務諸表(事業の状態や成績をまとめて示す書類)
これらは、 それぞれ独立した作業ではありません。 前の作業をもとに、次の作業が行われるという関係になっています。
仕訳から始まる整理
取引が発生すると、 まず行うのが 仕訳 です。
仕訳では、 取引の内容を複式簿記の考え方に従って整理し、 記録の出発点を作ります。
たとえば、現金で文房具を購入した場合、
- 現金が減った
- 文房具が増えた
という2つの変化を整理して記録します。
この仕訳が正しく行われていないと、 その後の帳簿や試算表も正しく作ることができません。
帳簿で内容をまとめる
仕訳した内容は、 そのままでは全体を把握しにくいため、 帳簿にまとめて記録します。
帳簿では、 同じ種類の取引を集めることで、
- 現在の残高
- これまでの増減
が分かるようになります。
たとえば、 現金に関する取引をまとめることで、 今いくら現金があるのかを確認できます。
試算表で確認する
帳簿に記録した内容が正しいかどうかを確認するために、 試算表を作成します。
試算表は、 記録の途中経過をチェックするための表であり、
- 記入漏れ
- 計算ミス
などに早く気づくための重要な役割を持っています。
財務諸表で事業の状態を示す
最終的に作成されるのが、 財務諸表です。
財務諸表を見ることで、
- 現在の財産や借金の状態
- 一定期間の利益や損失
といった、 事業の全体像を把握することができます。
全体像を押さえることが大切
この段階では、 細かい書き方や計算方法を覚える必要はありません。
まずは、
- 簿記は流れで成り立っていること
- すべてが複式簿記の考え方につながっていること
を理解しておくことが大切です。
仕訳とは何か(増減ルールの理解)
仕訳では、 取引を「2つの側面」に分け、 それぞれを借方と貸方に振り分けて記録します。
このとき重要になるのが、 各要素が増えたのか、減ったのかという視点です。
増減ルールを具体例で考える
まとめて考えると、 たとえば、 現金で消耗品を買った場合は次のようになります。
- 消耗品費(費用)が発生した → 左(借方)
- 現金(資産)が減った → 右(貸方)
この取引を仕訳で表すと、
(借)消耗品費 100 / (貸)現金 100
となります。
なぜこの位置になるのか
費用とは、 事業を行うために使われ、利益を減らすものです。 そのため、 費用が発生したときは、 必ず左(借方)に書くというルールになっています。
一方、資産とは、 事業が持っているお金やモノです。 資産は、増えたときに左(借方)に書くのが定位置です。
そのため、
- 資産が増える → 左(借方)
- 資産が減る → 定位置と逆の右(貸方)
と考えます。
覚え方のポイント
この例から分かるように、 仕訳は次のように考えると分かりやすくなります。
- 「増えた費用は左」
- 「減った資産は右」
この2つを意識するだけで、 仕訳の判断は一気に楽になります。
暗記ではなく、動きで理解する
仕訳は、 借方・貸方を丸暗記する作業ではありません。
- 何が増えたのか
- 何が減ったのか
という 取引の動き を整理し、 それを決まった位置に書き写す作業です。
この考え方が身につけば、 初めて見る取引でも、 落ち着いて仕訳を判断できるようになります。
勘定科目という整理のルール
世の中には、無数の取引があります。 たとえば、
- ノートを買った
- 鉛筆を買った
- 消しゴムを買った
といった取引です。
これらを 「ノート代」「鉛筆代」「消しゴム代」 と一つひとつ別々に記録していくと、 後で集計するときにとても手間がかかります。
そこで簿記では、 これらをまとめて 「消耗品費」 という共通の名前で管理します。
このように、 取引の内容を分かりやすく整理するためにつける 分類用の名前が、 勘定科目です。
勘定科目の役割
個人経営者にとって、 勘定科目の役割はとてもシンプルです。
それは、 日々の取引を同じ性質ごとにまとめて管理することです。
勘定科目を使うことで、
- 消耗品にいくら使ったのか
- 給料はいくら支払ったのか
- 売上はいくらあったのか
といったことを、 後から簡単に確認できるようになります。
5つのグループと勘定科目
すべての勘定科目は、 必ず次の 5つのグループ の いずれかに分類されます。
- 資産 (事業が持っているお金やモノ、将来価値を生むもの) 例:現金、普通預金、売掛金、備品
- 負債 (後で支払わなければならない義務) 例:買掛金、借入金、未払金
- 純資産 (返さなくてよい、自分の元手) 例:元入金
- 収益 (事業活動によって得たお金) 例:売上、受取利息、雑収入
- 費用 (収益を得るために使ったお金) 例:消耗品費、給料、旅費交通費、支払利息
勘定科目は、 必ずこの5つのどれかに当てはまります。
勘定科目を使うときのルール
仕訳をするときは、 自分で勝手に勘定科目の名前を作ることはしません。
基本は、 試験や帳簿で決められた 勘定科目一覧の中から選ぶ というルールになっています。
たとえば、 1,000円のガソリン代を現金で支払った場合、
「ガソリン代」という名前は使いません。
正しくは、
- 旅費交通費
- 車両費
といった、 決められた勘定科目を使います。
試験でのポイント:勘定科目のグループを判断する
試験で特に大切なのは、 その勘定科目が 5つのグループのどれに当てはまるか をすぐに判断できることです。
勘定科目の名前を見たら、 次のように考えます。
- これは事業が持っているものか
- 後で支払う必要があるものか
- 事業で得た収入か
- 収入を得るために使った支出か
たとえば、
- 未払金は、後で支払う義務があるため、負債です。
- 受取利息は、事業活動によって得たお金なので、収益です。
このように、 勘定科目の性質を考えて グループを判断します。
グループが分かると仕訳が楽になる
勘定科目のグループが分かれば、 前の章で学んだ 借方・貸方のルールをそのまま使うことができます。
- 資産や費用が増えたのか
- 資産や負債が減ったのか
を考えるだけで、 左に書くのか、右に書くのかが 自然に決まります。
まとめ
勘定科目とは、 取引の内容を分かりやすく整理するための 分類用のラベルです。
名前を丸暗記するのではなく、 その取引が 「資産なのか」「費用なのか」 といった性質を考えることが大切です。
この考え方が身につけば、 仕訳はずっと分かりやすくなり、 試験でも迷いにくくなります。
借方・貸方の考え方
前の章では、 取引を整理するための「勘定科目」について学びました。
この章では、 その勘定科目を 左と右のどちらに書くのかという、 借方・貸方の役割を整理します。
借方・貸方の役割
複式簿記では、 1つの取引を 必ず2つの側面から記録します。
そのため、 「左側に書くもの」と 「右側に書くもの」が、 あらかじめルールで決められています。
左側(借方)に書くもの
左側、つまり借方には、 次のような内容を書きます。
- 資産の増加 (現金が入ってきた、備品を買った など)
- 費用の発生 (肥料を買った、給料を払った、電気代を払った など)
事業の中で 「使われたもの」 「事業に入ってきたもの」 が、借方に集まります。
右側(貸方)に書くもの
右側、つまり貸方には、 次のような内容を書きます。
- 負債の増加 (借金をした、ツケで買った など)
- 収益の発生 (売上が上がった、利息をもらった など)
- 純資産の増加 (元手が増えた など)
事業の成果として得たものや、 後で返す必要があるものが、 貸方に集まります。
なぜ「借方」「貸方」という言葉なのか(豆知識)
現代の簿記では、 実際にお金を「借りて」いなくても、 左側に書くことがあります。
この言葉は、 中世イタリアで簿記が生まれたころの名残だと 言われています。
当時の銀行家は、
- 「(顧客が)私から借りている分」を左側
- 「(顧客が)私に貸している分」を右側
として帳簿に記録していました。
現在では、 この意味はほとんど使われていません。 左=借方、右=貸方という記号として 捉えるのが正解です。
貸借一致の原則
仕訳を書くときには、 必ず守らなければならない原則があります。
それが、 借方の合計金額と、貸方の合計金額は必ず一致する というルールです。
正しい例(合計が一致している)
| 仕訳 | 借方 | 金額(借方) | 貸方 | 金額(貸方) |
|---|---|---|---|---|
| ① | 肥料費 | 1,000 | 現金 | 1,000 |
| ② | 消耗品費 | 800 | 現金 | 800 |
| ③ | 旅費交通費 | 500 | 現金 | 500 |
| 合計 | 2,300(借方) | 2,300(貸方) |
複数の仕訳を合計しても、 借方と貸方の金額は同じになります。
間違いの例(合計が一致していない)
| 仕訳 | 借方 | 金額(借方) | 貸方 | 金額(貸方) |
|---|---|---|---|---|
| ① | 肥料費 | 1,000 | 現金 | 1,000 |
| ② | 消耗品費 | 800 | 現金 | 800 |
| ③ | 旅費交通費 | 500 | 現金 | 400 × |
| 合計 | 2,300(借方) | 2,200(貸方) × |
この場合、 ③の仕訳で金額が合っていないため、 合計でも借方と貸方が一致しなくなっています。
まとめ
借方・貸方とは、 取引の2つの側面を、 左と右に分けて記録するための仕組みです。
言葉の意味に引きずられず、
- 何が増えたのか
- 何が減ったのか
を考え、 決められた位置に書くことが大切です。
また、 合計金額が一致しているかを必ず確認することが、 仕訳ミスを防ぐ最大のポイントになります。
帳簿と勘定口座の考え方
前の章では、 仕訳を書いたあとに行う 帳簿への記入について学びました。
この章では、 帳簿とはどのようなものか、 そして勘定口座を使う意味を、 もう一度整理します。
帳簿は「意味の決まった表」
帳簿は、 見た目だけで言えば 表のようなものです。
行と列があり、 数字を書き込んでいく点では、 エクセルの表とよく似ています。
ただし、 帳簿は単なる一覧表ではありません。
- 左側は借方
- 右側は貸方
というように、 書く位置そのものに意味がある表です。
勘定口座とは
勘定口座とは、 1つの勘定科目ごとに用意された表です。
たとえば、
- 現金の勘定口座
- 肥料費の勘定口座
- 売上の勘定口座
というように、 科目ごとに別々の表を使います。
勘定口座も、 帳簿と同じく、
- 左が借方
- 右が貸方
という構造になっています。
銀行口座ではなく勘定口座を使う理由
銀行口座が示すのは、 「お金がいくらあるか」という 金額の動きだけです。
一方、勘定口座は、
- 何に使ったお金なのか
- それが費用なのか、資産なのか
- 事業にどんな影響があったのか
といった 取引の意味を整理するための表です。
簿記では、 お金そのものよりも、 取引の中身を把握することが重要になります。
そのため、 銀行口座ではなく、 勘定口座を使って記録します。
仕訳と帳簿の関係
仕訳は、 取引を順番に並べた記録です。
帳簿(勘定口座)は、 その仕訳を 科目ごとに整理し直した表です。
- 仕訳:取引の発生順
- 帳簿:取引の内容別
同じ取引を、 見方を変えて整理しているだけです。
まとめ
帳簿とは、 取引を整理するための、意味の決まった表です。
勘定口座は、 その帳簿の中で使われる 勘定科目ごとの表です。
- 銀行口座は「お金の置き場所」
- 勘定口座は「取引の意味を整理する道具」
この違いを理解すると、 帳簿の役割が はっきりと見えてくるようになります。
次の章では、 勘定口座を使って行う 残高の計算について説明します。
残高(ざんだか)の考え方
これまでの章では、 取引を仕訳し、帳簿(勘定口座)に記入する流れを学んできました。
この章では、 その結果として求める 「残高(ざんだか)」について説明します。
残高とは何か
残高とは、 ある時点において、その勘定口座にいくら残っているか を表す結果の数字です。
勘定口座を「箱」にたとえると、 残高は その箱の中に今どれだけ入っているか を示しています。
日商簿記でも農業簿記でも、 日々行われる仕訳を集計し、 最終的にこの残高を求めることが、 決算の第一歩になります。
残高の求め方(計算のルール)
残高は、 勘定口座(T字勘定)の
- 左側(借方)
- 右側(貸方)
それぞれの合計を出し、 その差額として求めます。
計算の基本ルールは次のとおりです。
大きい方の合計 − 小さい方の合計 = 残高
たとえば、現金の勘定口座で、
- 借方合計:1,000円
- 貸方合計:700円
であれば、
1,000 − 700 = 300円
となり、 300円が現金の残高になります。
残高が出る場所(ホームポジション)
残高は、 どちら側にでも出るわけではありません。
勘定科目ごとに、 残高が出る定位置(ホームポジション)が決まっています。
| 勘定科目のグループ | 残高が出る場所 | 意味 |
|---|---|---|
| 資産(現金・未収金など) | 左(借方)残高 | 今これだけ持っている |
| 負債(借入金・未払金など) | 右(貸方)残高 | 今これだけ返すべき |
| 純資産(元入金など) | 右(貸方)残高 | 今これだけ元手がある |
| 収益(売上など) | 右(貸方)残高 | 今年これだけ稼いだ |
| 費用(肥料費・消耗品費など) | 左(借方)残高 | 今年これだけ使った |
この位置関係を覚えておくと、 残高の確認がとても楽になります。
試験での注意点
たとえば、 資産である現金の勘定口座なのに、 残高が右側(貸方)に出ている場合は、 どこかでミスをしているサインです。
通常、 現金がマイナスになることはありません。
残高の位置を見ることで、
- 計算ミス
- 仕訳ミス
- 転記ミス
に気づくことができます。
残高試算表との関係
試験でよく出題されるのが、 残高試算表です。
残高試算表とは、 すべての勘定口座で求めた 残高だけを集めた表です。
作成の流れは次のとおりです。
- 各勘定口座で残高を計算する
- その残高を試算表に書き写す
- 左側残高の合計と右側残高の合計を比べる
ここで金額が一致すれば、 これまでの仕訳や転記が 正しかったことの証明になります。
なぜ残高が重要なのか
簿記の最終目標は、 決算書を作ることです。
決算書に載せる数字は、 取引の一つ一つではなく、 すべて残高です。
- 貸借対照表(B/S) → 決算日時点の資産・負債・純資産の残高
- 損益計算書(P/L) → 1年間の収益と費用の合計(=残高)
残高は、 仕訳という「動き(フロー)」を積み重ねた 最終結果(ストック)なのです。
まとめ
残高とは、 勘定口座に記録された取引の結果として残った数字です。
- 仕訳は一回一回の動き
- 残高はその積み重ねの結果
お財布や通帳を開いたときに見る 「いま現在の金額」と同じ感覚で考えると、 理解しやすくなります。
残高試算表(ざんだかしさんひょう)
前の章では、 各勘定口座で残高を計算する方法を学びました。
この章では、 その残高を一つにまとめて確認する 残高試算表について説明します。
残高試算表とは何か
残高試算表とは、 すべての勘定口座の残高を一つの表にまとめたリストです。
決算の前や、 毎月の締めくくりとして作成されます。
英語では Trial Balance(トライアル・バランス) と呼ばれ、 「正しく記録できているかを試しに計算する表」 という意味があります。
残高試算表の役割
残高試算表には、 大きく分けて2つの役割があります。
ミスがないかをチェックするため
複式簿記には、 借方の合計と貸方の合計は必ず一致する という大原則があります。
すべての勘定口座の残高を集計したとき、 左右の合計が1円でもズレていれば、 どこかで仕訳や転記を間違えていることが分かります。
残高試算表は、 帳簿付けの正しさを確認する 最重要のチェック表です。
決算書の下書きにするため
残高試算表が完成すれば、 あとは数字を
- 貸借対照表
- 損益計算書
に振り分けるだけで、 決算書を作ることができます。
そのため、 残高試算表は 決算書の下書きとも言えます。
残高試算表の見た目と構造
残高試算表は、 次のような形をしています。
| 借方残高 | 勘定科目 | 貸方残高 |
|---|---|---|
| 500,000 | 現金 | |
| 200,000 | 未収金 | |
| 借入金 | 300,000 | |
| 農産物売上 | 600,000 | |
| 200,000 | 肥料費 | |
| 900,000 | 合計 | 900,000 |
この表では、
- 真ん中に勘定科目
- 左側に借方残高
- 右側に貸方残高
を記入します。
資産や費用の残高は左側に、 負債・純資産・収益の残高は右側に並びます。
一番下の 借方残高合計と貸方残高合計が一致していれば正解です。
試験での重要ポイント
日商簿記3級・農業簿記3級では、 残高試算表の問題は 配点が高い山場になります。
特に注意したい点は次の2つです。
合計試算表との違い
- 合計試算表 → 借方・貸方の合計を書く
- 残高試算表 → 差し引きした残高だけを書く
試験では、 両方を組み合わせた 合計残高試算表が出題されることもあります。
集計の順番を守る
必ず、
- 仕訳
- 勘定口座への転記
- 残高の計算
という順番で進めます。
特に、 現金や普通預金は取引数が多いため、 集計ミスが起きやすい勘定科目です。
まとめ
残高試算表は、 ここまでの帳簿付けが正しいかを確認するための表です。
言い換えると、 帳簿の「健康診断書」のような存在です。
- 合計が一致していれば、ここまで正しい
- 一致しなければ、どこかにミスがある
この確認を終えて、 はじめて安心して決算に進むことができます。
決算書(けっさんしょ)とは何か
これまでの章では、 仕訳から始まり、勘定口座への転記、残高の計算、 そして残高試算表の作成までを学んできました。
この章では、 それらすべての作業の集大成である 決算書について説明します。
決算書とは何か
決算書とは、 1年間の経営成績と、年度末時点の財政状態をまとめた「会社や農家の成績表」 のことです。
日商簿記3級でも農業簿記3級でも、 この決算書を作成することが、 簿記学習の最終ゴールになります。
正式には 財務諸表(ざいむしょひょう) と呼ばれます。
決算書を構成する「2つの柱」
決算書は、 主に次の2つの重要な書類で成り立っています。 この2つは、必ずセットで考えるのが基本です。
損益計算書(P/L:ピーエル)
損益計算書は、 1年間でいくら稼ぎ、何にいくら使い、最終的にいくら儲かったか を明らかにする書類です。
- 中身:収益と費用の残高
- ゴール:当期純利益を算出する
事業の「成績」や「結果」を示す表だと考えると、 理解しやすくなります。
貸借対照表(B/S:ビーエス)
貸借対照表は、 決算日における 財産と借金の状態を示す書類です。
- 中身:資産・負債・純資産の残高
- ゴール:経営の安定性を示す
財布の中身や体力をチェックする 健康診断表のような役割を持っています。
なぜ決算書を作るのか
決算書を作る理由は、 大きく分けて次の3つです。
- 税金を正しく計算するため
- 銀行からお金を借りるため
- 自分の経営状態を正確に知るため
決算書は、 義務として作るだけのものではありません。
どの経費が多すぎるのか、 手元の資金は足りているのかを把握し、 次の経営判断につなげるための道具でもあります。
残高試算表から決算書への振り分け
決算書は、 新しく数字を作るものではありません。
これまで作成してきた 残高試算表の数字を振り分けるだけで完成します。
- 収益・費用の残高 → 損益計算書へ
- 資産・負債・純資産の残高 → 貸借対照表へ
パズルのように当てはめていくことで、 自然と決算書の形が整います。
農業簿記と日商簿記の違い
決算書の基本構造は、 農業簿記と日商簿記で共通しています。
ただし、 扱うビジネスの性質に違いがあります。
- 日商簿記 → 商品を仕入れて売る商業の報告書
- 農業簿記 → 種や肥料を投入し、作物を育てて売る農業の報告書
そのため、農業簿記では、 農産物を作るためにかかったコストが 損益計算書に詳しく表れるのが特徴です。
まとめ 簿記一巡(ぼきいちじゅん)
決算書は、 日々の仕訳を積み重ねて作った 残高の集大成です。
- 仕訳(日々の記録)
- 勘定口座への転記(整理)
- 残高試算表(確認と集計)
- 決算書(報告と分析)
この一連の流れを 簿記一巡と呼びます。
点だった知識が線につながり、 簿記全体の仕組みが はっきりと見えてくるはずです。
貸借対照表(B/S)の考え方
前の章では、 決算書が「経営の成績表」であり、 損益計算書(P/L)と貸借対照表(B/S)の 2つで構成されていることを学びました。
この章では、 そのうちの一つである 貸借対照表(B/S)について、 具体例を交えながら考え方を整理していきます。
貸借対照表(B/S)とは何か
貸借対照表(たいしゃくたいしょうひょう)とは、 ある特定の時点(決算日など)において、 会社や農家が「どのような財産を持ち、そのお金をどこから用意したか」 を示す書類です。
英語では Balance Sheet(バランスシート) と呼ばれ、 略して B/S と表記されます。
1年間の動きを表す損益計算書とは異なり、 貸借対照表は 「いま現在の状態」を表します。
貸借対照表(B/S)の構造
貸借対照表(B/S)の最大の特徴は、 左右に分かれた構造です。
- 左側(借方):資産
- 右側(貸方):負債・純資産
この左右の合計金額は、 必ず一致します。
左右がバランスすることから、 「バランスシート」と呼ばれています。
短い例題で見てみよう
次は、 ある農家の決算日時点の 貸借対照表(B/S)の例です。
| 資産 | 金額 | 負債・純資産 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 現金 | 300,000 | 借入金 | 200,000 |
| 普通預金 | 200,000 | 未払金 | 50,000 |
| 未収金 | 100,000 | 元入金 | 350,000 |
| 資産合計 | 600,000 | 負債・純資産合計 | 600,000 |
この表を見ると、
- 左側には「今、持っている財産」
- 右側には「そのお金をどうやって用意したか」
が並んでいることが分かります。
左側(借方):資産の考え方
左側(借方)には、 資産が並びます。
資産とは、 集めたお金を何に使っているか(運用状態) を表すものです。
例題では、
- 現金
- 普通預金
- 未収金
といった、 すぐに使える、または将来お金になるものが 資産として並んでいます。
農業簿記では、 農業機械や育成中の家畜・果樹なども 資産に含まれます。
右側(貸方):負債・純資産の考え方
右側(貸方)には、 負債と純資産が並びます。
負債
負債とは、 将来返さなければならないお金です。
例題では、
- 借入金
- 未払金
が該当します。
純資産
純資産とは、 返す必要のない、自分自身のお金です。
- 元入金
- これまでに積み上げた利益
がここに含まれます。
貸借対照表(B/S)から分かること
貸借対照表(B/S)を見ることで、 その経営が 健康的かどうかを判断できます。
- 借金に頼りすぎていないか
- 自分のお金(純資産)がどれくらいあるか
- すぐに支払える資産が足りているか
といった点を、 一目で確認できます。
損益計算書(P/L)との違い(重要)
貸借対照表(B/S)と損益計算書(P/L)は、 役割がまったく異なります。
- 損益計算書(P/L) → 1年間の動き(フロー)
- 貸借対照表(B/S) → ある時点の状態(ストック)
貸借対照表(B/S)は、 財産の写真(スナップショット) だと考えると理解しやすくなります。
まとめ
貸借対照表(B/S)は、 ある時点の財産と資金の出どころを写した表です。
- 左側を見れば「何を持っているか」
- 右側を見れば「どうやって用意したか」
が分かります。
この考え方を押さえておけば、 次の章で学ぶ 貸借対照表(B/S)の作り方が、 とてもスムーズに理解できるようになります。
損益計算書(P/L)の考え方
前の章では、 貸借対照表(B/S)が 「ある時点の財産の状態」を表す書類であることを学びました。
この章では、 決算書のもう一つの柱である 損益計算書(P/L)について、 その考え方を整理していきます。
損益計算書(P/L)とは何か
損益計算書(そんえきけいさんしょ)とは、 ある一定期間(通常は1年間)に 「いくら稼いで、そのためにいくら使い、結局いくら儲かったか」 をまとめた書類です。
英語では Profit and Loss Statement と呼ばれ、 略して P/L(ピーエル) と表記されます。
貸借対照表が 「今どうなっているか」を示すのに対し、 損益計算書は 「この1年間に何が起きたか」 を示す書類です。
損益計算書(P/L)のシンプルな構造
損益計算書(P/L)は、 収益と費用を並べて、その差額で利益を計算する とてもシンプルな構造をしています。
基本の形は次のとおりです。
| 費用(借方) | 金額 | 収益(貸方) | 金額 |
|---|---|---|---|
| 仕入 | 300,000 | 売上高 | 600,000 |
| 給料 | 120,000 | 受取利息 | 10,000 |
| 水道光熱費 | 50,000 | ||
| 通信費 | 20,000 | ||
| 当期純利益 | 120,000 | ||
| 合計 | 610,000 | 合計 | 610,000 |
この表では、
- 右側(収益)に「どうやって稼いだか」
- 左側(費用)に「何にお金を使ったか」
が並び、 一番下に 当期純利益が表示されます。
利益の出し方(ここが一番重要)
損益計算書(P/L)の最大の目的は、 当期純利益を導き出すことです。
計算式は、 とてもシンプルです。
- 収益が費用より多い場合 → 当期純利益(黒字)
- 費用が収益より多い場合 → 当期純損失(赤字)
黒字の場合は、 差額を左側(費用側)に記入して、 左右の合計を一致させます。
損益計算書(P/L)から分かること
損益計算書(P/L)を見ることで、 次のようなことが分かります。
- どの収益が中心になっているか
- どの費用が多くかかっているか
- 事業として利益が出ているか
つまり、 経営の成績表としての役割を持っています。
貸借対照表(B/S)とのつながり
損益計算書(P/L)で計算された 当期純利益は、 最終的に 貸借対照表(B/S)の右側(純資産) に加えられます。
1年間の活動の結果が、 現在の財産を増やす、 という流れです。
まとめ
損益計算書(P/L)は、 1年間の経営活動の成果と過程をまとめた書類です。
- 右側(収益)を見れば「どう稼いだか」
- 左側(費用)を見れば「何に使ったか」
が分かります。
この考え方を理解しておくことで、 次の章で学ぶ 損益計算書(P/L)の作り方が、 よりスムーズに理解できるようになります。
損益計算書(P/L)の作り方
前の章では、 損益計算書(P/L)が 一定期間の経営成績を表す書類であり、 収益と費用の差から 当期純利益を求める表であることを学びました。
この章では、 その損益計算書(P/L)を 実際に作成する手順を整理していきます。
損益計算書(P/L)を作る前に
損益計算書を作るために、 新しい計算を始める必要はありません。
ここで使うのは、 残高試算表です。
すでに、
- 仕訳
- 勘定口座への転記
- 残高試算表の作成
が終わっていれば、 材料はすべてそろっています。
損益計算書に使う勘定科目
残高試算表にある勘定科目のうち、 損益計算書に使うのは 次の2つだけです。
- 収益
- 費用
資産・負債・純資産の勘定科目は、 この章では使いません。 それらは、 貸借対照表(B/S)を作るときに使います。
損益計算書(P/L)の基本的な書き方
損益計算書は、 左右に分かれた表で作成します。
- 左側(借方):費用
- 右側(貸方):収益
残高試算表にある金額を、 それぞれ正しい場所に そのまま書き写します。
具体例で作ってみよう
次の残高試算表があるとします。
| 借方残高 | 勘定科目 | 貸方残高 |
|---|---|---|
| 300,000 | 仕入 | |
| 120,000 | 給料 | |
| 50,000 | 水道光熱費 | |
| 20,000 | 通信費 | |
| 売上高 | 600,000 | |
| 受取利息 | 10,000 |
この中から、
- 費用:仕入、給料、水道光熱費、通信費
- 収益:売上高、受取利息
を使って、 損益計算書を作成します。
完成した損益計算書(例)
| 費用 | 金額 | 収益 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 仕入 | 300,000 | 売上高 | 600,000 |
| 給料 | 120,000 | 受取利息 | 10,000 |
| 水道光熱費 | 50,000 | ||
| 通信費 | 20,000 | ||
| 当期純利益 | 120,000 | ||
| 合計 | 610,000 | 合計 | 610,000 |
収益の合計から費用の合計を引いた差額が、 当期純利益として表示されています。
合計が合わないときの確認ポイント
左右の合計が一致しない場合は、 次の点を確認します。
- 収益と費用を取り違えていないか
- 金額の転記ミスがないか
- 利益(または損失)を入れ忘れていないか
残高試算表と見比べながら、 一つずつ確認しましょう。
試験での重要ポイント
試験では、
- 当期純利益が空欄
- 収益や費用の一部だけが示されている
といった問題がよく出ます。
その場合は、 次の関係を思い出してください。
収益-費用=利益
数字を動かす前に、 どれが収益で、どれが費用か を整理することが大切です。
まとめ
損益計算書(P/L)は、 残高試算表から収益と費用を抜き出して作る表です。
- 新しい計算はしない
- 利益を入れて左右を一致させる
この2点を押さえておけば、 損益計算書は 確実に作れるようになります。
次の章では、 損益計算書(P/L)と貸借対照表(B/S)のつながり を整理していきます。
決算書ができるまでの4ステップ
前の章では、 損益計算書(P/L)の作り方を学び、 収益と費用から利益を求める流れを確認しました。
この章では、 取引が発生してから 最終的な決算書(B/S・P/L)が完成するまでの全体像 を整理します。
決算書は突然できあがるものではない
決算書は、 決算日にいきなり作るものではありません。
日々の取引を記録し、 集計し、確認し、修正する という一連の作業を経て、 はじめて完成します。
この流れは、 どの会社・事業でも共通です。
ステップ1 日々の記録(仕訳と転記)
最初に行うのは、 毎日の取引の記録です。
仕訳
仕訳とは、 発生した取引を 仕訳帳に記録する作業です。
- どの勘定科目が増えたか
- どの勘定科目が減ったか
を、ルールに従って整理します。
転記
転記とは、 仕訳帳に記録した内容を 総勘定元帳(勘定口座)へ 科目ごとに書き写す作業です。
この段階では、 正確に記録を残すことが最も重要です。
ステップ2 集計とチェック(試算表の作成)
決算日になったら、 1年間の記録を集計します。
ここで作成するのが、 残高試算表です。
残高試算表では、
- すべての勘定口座の残高を集め
- 左側の合計と右側の合計が 一致しているかを確認します
左右が一致していなければ、 どこかで記録や計算のミスがあることになります。
ステップ3 正確な数字への修正(決算整理)
試算表の数字は、 そのまま決算書に使うわけではありません。
「今年1年間の本当の姿」 を表すために、 必要な修正を行います。
主な決算整理には、 次のようなものがあります。
- 売上原価の計算 在庫を確認し、 今年実際に売れた分だけのコストを確定させます。
- 減価償却 車やパソコンなどの設備について、 1年間で価値が減った分を費用として計上します。
- 費用の見越し・繰延 来年分の家賃を先払いしている場合など、 期間に応じて費用を調整します。
ステップ4 決算書の作成(報告)
決算整理後の正しい数字を使って、 最終的な報告書を作成します。
作成する書類は、 次の2つです。
| 書類名 | 集めるグループ | 分かること |
|---|---|---|
| 損益計算書(P/L) | 収益・費用 | 1年間の利益 |
| 貸借対照表(B/S) | 資産・負債・純資産 | 決算日時点の財政状態 |
簿記の共通ルール「5要素」の行き先
決算書が完成する際、 すべての勘定科目は 5つの要素のいずれかに分類されます。
- 資産
- 負債
- 純資産
- 収益
- 費用
それぞれの行き先は決まっています。
損益計算書(P/L)
- 左側:費用
- 右側:収益
- 差額:当期純利益
貸借対照表(B/S)
- 左側:資産
- 右側:負債
- 右下:純資産
まとめ 決算書作成は「情報の集約」
簿記の全体像は、 次の一本の流れで表せます。
バラバラの取引を記録し、 科目ごとに集め、 ミスがないか確認し、 修正を加え、 最終的な成績表にまとめる
この流れが頭に入っていれば、 仕訳問題に取り組むときも、 「この取引は最終的にどこへ行くのか」 をイメージしながら解けるようになります。
決算書は、 日々の記録の積み重ねが 形になったものなのです。
決算整理の考え方と役割
前の章では、 取引が発生してから決算書が完成するまでの 全体の流れ(4ステップ)を確認しました。
この章では、その中でも特に重要な 決算整理について、 考え方と役割をあらためて整理します。
決算整理とは何か
決算整理とは、 試算表の数字を「その年の正しい姿」に直す作業です。
残高試算表は、 日々の取引を集計した結果ではありますが、 そのままでは 「今年1年間の成績」を正確に表していない場合があります。
そこで、 決算書を作成する前に 必要な修正を行います。
なぜ決算整理が必要なのか
日々の取引は、 必ずしも「期間」を意識して記録されていません。
例えば、
- 来年分の家賃を今年まとめて支払っている
- まだ売れていない商品が残っている
- 高額な設備を何年も使い続けている
こうした取引を、 そのまま1年分の費用や収益として扱うと、 実態とズレが生じます。
決算整理は、 「今年の分だけ」を正しく切り出すための作業です。
決算整理で行う主な修正
決算整理では、 次のような修正を行います。
売上原価の計算
在庫を確認し、 今年実際に売れた分だけのコストを 費用として確定させます。
売れていない商品は、 来年以降に売るための資産として 貸借対照表に残します。
減価償却
車やパソコン、機械、建物などの設備は、 購入した年だけで使い切るものではありません。
これらは、 何年にもわたって使い続ける資産です。
もし購入した年に、 代金の全額を一気に費用にしてしまうと、
- その年だけ費用が極端に多くなり
- 翌年以降は費用がほとんど出ない
という不自然な結果になります。
そこで行うのが、 減価償却です。
減価償却とは、
- 設備を使える年数に分けて
- 毎年少しずつ費用として計上する
という考え方です。
これにより、
- その年に使った分だけを費用にできる
- 毎年の利益を正しく比較できる
ようになります。
なお、減価償却では お金が実際に出ていなくても費用が発生する という点が重要です。
- 購入時にお金はすでに支払っている
- その後は「価値が減った分」を費用として計上する
このため、
- 損益計算書(P/L)には 減価償却費として費用が計上され
- 貸借対照表(B/S)には 減価償却累計額として資産の価値が減っていく
という形で反映されます。
減価償却は、 期間に対応した正しい利益を計算するための調整 だと考えると理解しやすくなります。
費用・収益の見越しと繰延
- まだ支払っていないが、今年分として発生している費用
- すでに支払ったが、来年分にあたる費用
こうしたズレを調整し、 期間に対応した数字に直します。
決算整理が決算書に与える影響
決算整理を行うと、
- 損益計算書(P/L)の利益が変わる
- 貸借対照表(B/S)の資産や負債の金額が変わる
という影響が出ます。
つまり、 決算整理は P/LとB/Sの両方に関わる重要な作業です。
試験での重要ポイント
試験では、
- 決算整理前と後の違い
- なぜその修正が必要なのか
が問われることがあります。
仕訳を暗記するのではなく、 「なぜ直すのか」を意識することが大切です。
まとめ
決算整理は、 1年間の経営成績を正しく表すための調整作業です。
- 試算表は途中経過
- 決算整理で数字を整える
- その結果が決算書になる
この役割を理解しておくことで、 決算書全体の流れが よりはっきりと見えるようになります。
次の章では、 決算整理の中でも特に重要な 売上原価と在庫の考え方を詳しく見ていきます。
売上原価と在庫の考え方
前の章では、 決算整理の全体像と、 その中で行われる主な修正について学びました。
この章では、 決算整理の中でも特に重要な 売上原価と在庫の考え方を整理します。
売上原価とは何か
売上原価とは、 売れた商品に対応する仕入れのコストです。
ポイントは、 「仕入れた金額」ではなく、 「売れた分の金額」であることです。
商品は、
- 仕入れた年に売れるとは限らない
- 売れ残ることもある
ため、 仕入れた金額をそのまま費用にすることはできません。
在庫があると何が起きるか
期末に商品が残っている場合、 その商品はまだ売れていません。
つまり、
- まだ収益を生んでいない
- 来年以降に売るためのもの
という状態です。
このため、 売れていない商品は 費用ではなく資産として扱います。
売上原価の基本的な考え方
売上原価は、 次の関係で計算されます。
- 期首在庫
- 当期仕入
- 期末在庫
この3つを使って、 今年売れた分だけのコストを切り出します。
考え方としては、
- 仕入れた商品から
- 売れ残った分を差し引く
というイメージです。
なぜ在庫を数える必要があるのか
決算時に在庫を数えるのは、 売上原価を正しく計算するためです。
在庫を確認しないままでは、
- 売れていない商品まで費用にしてしまう
- 利益が実態より少なく見える
といったズレが生じます。
在庫の確認は、 利益を正しく計算するための重要な作業です。
売上原価が決算書に与える影響
売上原価を計算すると、
- 損益計算書(P/L)では 費用として計上され
- 貸借対照表(B/S)では 在庫が資産として残る
という形になります。
売上原価の計算は、 P/LとB/Sの両方に影響する決算整理です。
試験での重要ポイント
試験では、
- 在庫がある場合の売上原価
- 在庫が増減したときの利益への影響
がよく問われます。
「仕入=費用」と 短絡的に考えず、 売れたかどうかを意識することが大切です。
まとめ
売上原価と在庫の考え方は、 期間に対応した利益を計算するための基本です。
- 売れた分だけが費用になる
- 売れ残りは資産として残る
この考え方を理解できれば、 決算整理の意味が よりはっきりと見えてきます。
次の章では、 減価償却をもう一段深く掘り下げ、 決算書への影響を整理していきます。
減価償却の考え方と実務の基本
前の章では、 売上原価と在庫の考え方を通して、 「売れた分だけを費用にする」という 期間対応の考え方を確認しました。
この章では、 同じく期間対応が重要になる 減価償却について、 基礎から実務までを整理します。
減価償却とは何か
減価償却(げんかしょうきゃく)とは、 建物や車、パソコンなどのように 高額で、長期間使う資産の代金を、 購入した年に一度に費用にするのではなく、 使える期間(耐用年数)にわたって少しずつ費用に配分するルールです。
対象となるのは、
- 建物
- 車両
- パソコン
- 機械・設備
など、 何年も使い続けるものです。
なぜ減価償却が必要なのか
例えば、 300万円の営業車を現金で購入したとします。
もし購入した年に、 300万円すべてを費用にしてしまうと、
- その年だけ大きな赤字になり
- 翌年以降は「タダで車を使っている」ように見える
という不自然な状態になります。
減価償却では、
- 車は数年かけて少しずつ古くなる
- 価値が減った分を、毎年費用にする
と考えます。
例えば耐用年数が5年なら、 毎年60万円ずつ費用にすることで、
- 車を使って稼いでいる期間
- 車の代金(費用)
が、正しく対応するようになります。
減価償却の計算に使う3つの要素
減価償却の計算には、 次の3つの要素が必要です。
- 取得原価 購入時の金額(本体代+付随費用)
- 耐用年数 何年使えるか ※ 法律で年数が定められています
- 残存価額 使い終わった後に残る価値 ※ 現在の会計ルールでは0円(備忘価格1円)として扱います
最も基本的な方法「定額法」
減価償却の中で、 最も基本的なのが定額法です。
定額法では、 毎年同じ金額を費用にします。
計算の考え方は次のとおりです。
年間の減価償却費 = 取得原価 ÷ 耐用年数
120万円 ÷ 6年 = 20万円
この場合、 毎年20万円ずつを 減価償却費として計上します。
帳簿への書き方(間接法)
試験や実務でよく使われるのが、 間接法です。
間接法では、 資産の金額を直接減らすのではなく、 減価償却累計額という勘定科目に 「これまで減った価値の合計」をためていきます。
仕訳の基本形は次のとおりです。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 減価償却費 | 200,000 | 減価償却累計額 | 200,000 |
- 減価償却費:その年の費用
- 減価償却累計額:これまでに減った価値の合計
決算書への載り方
減価償却は、 決算書に次のように反映されます。
損益計算書(P/L)
- 「減価償却費」として その年の費用に計上されます。
貸借対照表(B/S)
- 資産のすぐ下に 減価償却累計額を差し引く形で表示されます。
例として、 2年目の車の表示は次のようになります。
- 車両運搬具:1,200,000
- 減価償却累計額:△400,000
- 帳簿価額:800,000
まとめ
減価償却は、 高価な資産を、使いながら少しずつ費用に変えていく仕組みです。
- お金は購入時にすでに支払っている
- 費用になるのは、数年に分けて
この「時間のズレ」を理解できると、 減価償却は一気に分かりやすくなります。
減価償却は、 正しい利益を計算するための重要な決算整理です。
費用と収益の見越し・繰延
前の章では、 減価償却を通して、 「お金の支出」と「費用になるタイミング」は一致しない という考え方を確認しました。
この章では、 同じく期間対応の考え方が重要になる 費用と収益の見越し・繰延について整理します。
見越し・繰延とは何か
見越し・繰延とは、 支払いや受け取りのタイミングと、費用・収益になる期間のズレを調整する作業です。
日々の取引では、
- まだ払っていないが、今年分として発生しているもの
- すでに払ったが、来年分にあたるもの
が混ざっています。
これらをそのままにしておくと、 1年間の成績が正しく表せません。
なぜ見越し・繰延が必要なのか
例えば、 来年分の家賃を今年まとめて支払っている場合、
- お金は今年出ている
- しかし、使うのは来年
という状態になります。
このままでは、 今年の費用が多くなりすぎ、 来年の費用が少なくなってしまいます。
見越し・繰延は、 「今年使った分だけ」を正しく切り出すための調整です。
見越しとは何か
見越しとは、 まだ支払っていないが、今年分として発生している費用や収益を計上することです。
代表的な例は、
- 未払給料
- 未払利息
- 未収収益
などです。
お金の動きはまだでも、 すでに発生しているものは、今年の成績に含める という考え方です。
繰延とは何か
繰延とは、 すでに支払った、または受け取ったが、来年分にあたる部分を除外することです。
代表的な例は、
- 前払家賃
- 前払保険料
- 前受収益
などです。
お金は動いていても、 まだ使っていない分は、来年の成績に回す という考え方になります。
見越し・繰延が決算書に与える影響
見越し・繰延を行うと、
- 損益計算書(P/L)では 費用や収益の金額が調整され
- 貸借対照表(B/S)では 未払金や前払費用などが計上されます
つまり、 P/LとB/Sの両方が同時に動く決算整理です。
試験で意識したいポイント
試験では、
- 今年分か、来年分か
- 費用か、資産か、負債か
を正しく判断できるかが問われます。
「お金を払ったかどうか」ではなく、 「いつの分か」を基準に考えることが大切です。
まとめ
見越し・繰延は、 期間に対応した正しい成績を出すための調整です。
- まだ払っていなくても、今年分は計上する
- 払っていても、来年分は除外する
この考え方が身につくと、 決算整理全体の意味が よりはっきりと理解できるようになります
決算整理後試算表と決算書完成まで
前の章では、 見越し・繰延を通して 「いつの分か」を基準に数字を整える考え方を確認しました。
この章では、 すべての決算整理が終わったあとに作成する 決算整理後試算表の役割と、 そこから決算書が完成するまでの流れを整理します。
決算整理後試算表とは何か
決算整理後試算表(けっさんせいりごしさんひょう)とは、 決算の最終段階で行う 決算整理仕訳をすべて反映させたあとの、最新かつ正しい残高をまとめた一覧表です。
英語では Post-Closing Trial Balance と呼ばれます。
ここに載っている数字は、 決算書を作成するための 最終確定データになります。
どのタイミングで作るものか
簿記の流れの中で見ると、 決算整理後試算表は 次の位置にあります。
- 決算整理前試算表 (1年間の取引を単純に集計したもの)
- 決算整理仕訳 (減価償却・在庫修正・見越し・繰延など)
- 決算整理後試算表 (修正後の最終チェック表)
- 決算書(B/S・P/L)の作成
つまり、 決算書を作る直前の最終チェック用リスト という位置づけです。
なぜ決算整理後試算表が必要なのか
決算整理では、
- 減価償却費の計算
- 売上原価の算出
- 見越し・繰延の調整
など、 複雑な仕訳が多く発生します。
これらの修正を行ったあとに、
- 計算ミスはないか
- 転記漏れはないか
を、 もう一度まとめて確認する必要があります。
決算整理後試算表で 借方(左)の合計と貸方(右)の合計が一致していれば、 自信を持って決算書作成に進むことができます。
表の構造と中身
決算整理後試算表の形は、 基本的に残高試算表と同じです。
違いは、 数字の中身がすべて「決算整理後の修正済み残高」になっている点です。
構造は次のようになります。
| 借方残高 | 勘定科目 | 貸方残高 |
|---|---|---|
| 450,000 | 現金 | |
| 800,000 | 備品 | |
| 減価償却累計額 | 200,000 | |
| 買掛金 | 300,000 | |
| 150,000 | 減価償却費 | |
| 1,400,000 | 合計 | 1,400,000 |
この表には、次の特徴があります。
- 決算整理で新しく登場した科目 (減価償却費、減価償却累計額など)が含まれている
- 各勘定科目の残高が 決算整理後の正しい金額になっている
- 借方合計と貸方合計が 必ず一致している
この一致を確認することで、 決算整理が正しく完了したかどうかを 一目で判断できます。
決算書への「最後のバトン」
決算整理後試算表が完成したら、 あとは数字を振り分けるだけです。
- 資産・負債・純資産の数字 → 貸借対照表(B/S)
- 収益・費用の数字 → 損益計算書(P/L)
新しい計算はほとんどなく、 正しい場所に移す作業が中心になります。
このとき、 損益計算書で計算された 当期純利益は、 貸借対照表の純資産に加えられます。
試験で意識したいポイント
試験では、
- 決算整理後試算表から 決算書を作成する問題
- 決算整理前との違い
がよく問われます。
「前」と「後」で何が変わったのか を意識しておくと、 問題の流れがつかみやすくなります。
まとめ
決算整理後試算表は、 決算書という本番の書類を作る前の、最終的な答え合わせシートです。
- 決算整理で数字を整え
- 試算表で確認し
- 決算書にまとめる
この流れを理解できれば、 決算書作成は 一本の道としてはっきり見えてきます。
決算書を読むための基本視点
前の章では、 決算整理後試算表から 決算書(B/S・P/L)が完成するまでの流れを確認しました。
この章では、 完成した決算書を どのような視点で読めばよいのかを整理します。
決算書は、 作って終わりではありません。 読むことで、はじめて意味を持つ書類です。
決算書は「会社の成績表」
決算書は、 会社や事業の状態をまとめた 成績表のようなものです。
- どれくらい儲かったのか
- どんな資産を持っているのか
- 借金はどれくらいあるのか
こうした情報が、 数字として整理されています。
損益計算書(P/L)を見る視点
損益計算書は、 1年間の経営成績を表す書類です。
まず注目したいのは、
- 売上はどれくらいあるか
- 費用はどれくらいかかっているか
- 最終的に利益が出ているか
という点です。
特に大切なのは、 利益がどのように生まれているかを見ることです。
- 売上が伸びて利益が出ているのか
- 費用を抑えて利益が出ているのか
数字の背景を考えることで、 経営の特徴が見えてきます。
貸借対照表(B/S)を見る視点
貸借対照表は、 決算日時点での財産の状態を表します。
ここでは、
- どんな資産を持っているか
- 借金はどれくらいあるか
- 自分のお金(純資産)はどれくらいか
を確認します。
ポイントは、 資産と負債のバランスです。
- 借金に頼りすぎていないか
- 自己資金がしっかり残っているか
を見ることで、 経営の安定性が分かります。
P/LとB/Sはセットで読む
損益計算書と貸借対照表は、 必ずセットで読むことが大切です。
- P/Lは「1年間の結果」
- B/Sは「積み上がった状態」
という関係にあります。
P/Lで出た利益は、 B/Sの純資産に加えられます。
このつながりを意識すると、 決算書全体が 一本の流れとして理解できるようになります。
数字の「変化」に注目する
決算書は、 1年分だけを見ても十分ではありません。
- 前年と比べてどう変わったか
- 売上や利益は増えているか
- 借金は増えていないか
数字の変化を見ることで、 経営の方向性が見えてきます。
試験で意識したいポイント
試験では、
- P/LとB/Sの役割の違い
- 利益がどこに反映されるか
といった 基本的な読み取りが問われます。
細かい分析よりも、 「何を表している書類か」を 正しく理解しているかが重要です。
まとめ
決算書は、 経営の結果と状態を数字で表したものです。
- P/Lで成績を見る
- B/Sで状態を見る
- 2つをセットで考える
この視点を持つことで、 決算書は ただの数字の集まりではなく、 意味のある情報として読めるようになります。
利益とお金はなぜズレるのか
前の章では、 決算書を読むための基本的な視点として、 損益計算書(P/L)と貸借対照表(B/S)をセットで見る考え方を確認しました。
この章では、 多くの人が最初につまずく 「利益が出ているのに、お金がない」 という疑問について整理します。
利益と現金は同じではない
まず大切なのは、 利益と現金残高は同じものではない という点です。
- 利益:一定期間の「成績」
- 現金:今、手元にある「お金」
この2つは、 必ずしも一致しません。
黒字なのにお金がない理由
利益が出ているのに、 お金が増えていない原因として、 次のようなものがあります。
- 売上がまだ回収できていない
- 高額な設備を購入した
- 借金の返済をしている
これらは、 利益には影響しないが、現金は減る取引です。
売掛金・買掛金の影響
例えば、 商品を売ったが、 代金はまだ受け取っていない場合、
- P/Lでは売上として利益が出る
- B/Sでは売掛金として残る
- 現金はまだ増えない
という状態になります。
逆に、 仕入れをしても、 まだ支払っていない場合は、
- 費用は発生する
- 現金はまだ減らない
というズレが生じます。
減価償却の影響
減価償却も、 利益と現金がズレる代表的な原因です。
- 設備購入時に現金はすでに支払っている
- その後、毎年費用だけが発生する
このため、
- 利益は減る
- 現金は動かない
という状態になります。
利益は「計算結果」、現金は「結果の一部」
利益は、 期間対応を考慮して計算された数字です。
一方、 現金は、 取引の一部しか反映していません。
そのため、
- 利益が出ていても資金繰りが苦しい
- 利益が少なくても現金が多い
といった状況が起こります。
試験で意識したいポイント
試験では、
- 利益と現金の違い
- なぜズレが生じるのか
といった 考え方の理解が問われます。
「黒字=お金が増える」 と短絡的に考えないことが大切です。
まとめ
利益とお金がズレるのは、 簿記が「正しい成績」を出すための仕組みだからです。
- 利益は期間の成績
- 現金は一時点の残高
- 両者は必ずしも一致しない
この違いを理解できると、 決算書の数字が より現実的に見えてくるようになります。
簿記の5要素をもう一度整理する
前の章では、 利益とお金がズレる理由を通して、 簿記が「現金の動き」だけを見ていないことを確認しました。
この章では、 これまで何度も登場してきた 簿記の5要素を、 あらためて整理します。
ここを理解できると、 仕訳・試算表・決算書が 一本の線でつながります。
簿記の5要素とは何か
簿記では、 すべての取引を 次の5つの要素に分類します。
- 資産
- 負債
- 純資産
- 収益
- 費用
どんな取引も、 必ずこの5つのどれかに当てはまります。
資産とは何か
資産とは、 将来お金に変わる可能性のあるものです。
代表的なものは、
- 現金
- 預金
- 売掛金
- 商品
- 備品
などです。
ポイントは、 「今後の価値があるかどうか」です。
負債とは何か
負債とは、 将来支払う義務のあるものです。
代表的なものは、
- 買掛金
- 借入金
- 未払金
などです。
負債は、 将来の資産流出を意味します。
純資産とは何か
純資産とは、 資産から負債を差し引いた残りです。
言い換えると、
- 自分のお金
- これまでの利益の積み重ね
です。
貸借対照表では、 資産と負債・純資産が 必ずつり合います。
収益と費用の役割
収益と費用は、 一定期間の成績を測るための要素です。
- 収益:稼いだ金額
- 費用:稼ぐために使った金額
この差が、 利益になります。
収益と費用は、 最終的に損益計算書に集められ、 利益としてまとめられます。
5要素の最終的な行き先
5要素は、 最終的に次のように整理されます。
- 資産・負債・純資産 → 貸借対照表(B/S)
- 収益・費用 → 損益計算書(P/L)
そして、 P/Lで計算された利益が、 B/Sの純資産に加えられます。
仕訳で迷わなくなる考え方
仕訳で迷ったときは、
- 何が増えたか
- 何が減ったか
- それは5要素のどれか
を順番に考えます。
金額よりも、 要素の動きを意識すると、 仕訳は自然に決まります。
試験で意識したいポイント
試験では、
- 勘定科目がどの要素に属するか
- どの決算書に載るか
がよく問われます。
暗記ではなく、 役割で覚えることが大切です。
まとめ
簿記の5要素は、 すべての取引を整理するための共通ルールです。
- 取引は必ず5要素に分かれる
- 5要素が決算書を形づくる
- 利益は純資産に積み上がる
この仕組みを理解できれば、 簿記全体が 一つの体系として見えてきます。
仕訳から決算書までを一本でつなぐ
前の章では、 簿記の5要素を整理し、 すべての取引が共通のルールで分類されていることを確認しました。
この章では、 日々の取引が どのような流れで決算書までたどり着くのかを、 一本の道として整理します。
簿記は「流れ」で理解する
簿記は、 個々の作業をバラバラに覚えると、 どうしても混乱しやすくなります。
大切なのは、 すべてが一つの流れでつながっている と理解することです。
取引から仕訳へ
すべては、 日々の取引から始まります。
- 商品を売った
- 代金を支払った
- 備品を購入した
これらの出来事を、 5要素に分けて記録したものが仕訳です。
仕訳は、 簿記のスタート地点です。
仕訳から勘定口座へ
仕訳した内容は、 勘定口座に転記されます。
ここでは、
- 各勘定科目ごとに
- 増減の流れを整理
します。
勘定口座は、 取引の履歴をまとめる箱 だと考えると分かりやすくなります。
勘定口座から試算表へ
勘定口座の残高を集計すると、 試算表が作成されます。
試算表では、
- 借方と貸方が一致しているか
- 記録ミスがないか
を確認します。
この段階では、 まだ決算整理は行われていません。
決算整理で数字を整える
試算表ができたら、 決算整理を行います。
- 減価償却
- 売上原価の計算
- 見越し・繰延
などを通して、 1年間の成績が正しく表れるように修正します。
決算整理後試算表で最終確認
決算整理を反映させたものが、 決算整理後試算表です。
ここで、
- 修正漏れがないか
- 合計が一致しているか
を最終確認します。
決算書の完成
決算整理後試算表の数字を使って、
- 収益・費用 → 損益計算書(P/L)
- 資産・負債・純資産 → 貸借対照表(B/S)
を作成します。
これで、 決算書が完成します。
「今どこを見ているか」を意識する
問題演習や実務では、
- 今は仕訳の段階か
- 試算表を見ているのか
- 決算書を作っているのか
を意識することが大切です。
段階を意識できると、 迷いが一気に減ります。
まとめ
簿記は、
- 取引
- 仕訳
- 勘定口座
- 試算表
- 決算整理
- 決算書
という 一本の流れで成り立っています。
この流れを理解できれば、 簿記は 暗記科目ではなく、 理解して使える知識になります。
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最終章 簿記を学ぶ意味と、次の一歩
ここまで、 仕訳から始まり、 決算整理、試算表、決算書の完成、 そして決算書の読み方までを 一つひとつ確認してきました。
この最終章では、 これまで学んできた内容を振り返りながら、 簿記を学ぶ意味と その先にどうつながっていくのかを整理します。
簿記は「記録の技術」であり「考え方」
簿記は、 単なる計算や暗記の科目ではありません。
- 何が増えたのか
- 何が減ったのか
- それはいつの成績なのか
を、 ルールに沿って整理する考え方です。
この考え方があるからこそ、
- 経営の成績を正しく測り
- 状態を客観的に把握する
ことができます。
決算書はゴールではない
決算書は、 簿記のゴールのように見えますが、 本当の意味では スタート地点でもあります。
- 利益は出ているか
- 資金繰りは安定しているか
- 無理のない経営ができているか
こうした判断は、 決算書をもとに行われます。
簿記は、 意思決定のための土台です。
試験勉強としての簿記
試験対策として簿記を学ぶ場合でも、
- なぜこの仕訳になるのか
- なぜこの数字がここに来るのか
を理解していれば、 丸暗記に頼らずに対応できます。
流れを理解している人ほど、 応用問題にも強くなります。
実務につながる簿記の視点
実務では、
- 数字の意味を読み取る力
- 異常な動きに気づく力
が求められます。
簿記を通して身につくのは、 数字を見る目です。
これは、 業種や立場を問わず、 長く役立つ力になります。
これからの学びにつなげる
ここまで理解できたなら、
- より上の級への挑戦
- 実務での活用
- 決算書分析へのステップアップ
など、 次の道が自然に見えてくるはずです。
簿記は、 学べば学ぶほど 世界が広がる分野です。
まとめ
簿記は、
- 取引を整理し
- 成績を正しく測り
- 未来の判断につなげる
ための共通言語です。
ここまで積み上げてきた理解は、 決して無駄にはなりません。
数字に振り回されるのではなく、 数字を使いこなす側になる その第一歩として、 この学びを大切にしてください。
