
『ジュラシック・ワールド/炎の王国(Fallen Kingdom)』(2018年)は、シリーズの方向性を根本から変えた重要作です。
前作でテーマパークが崩壊し、恐竜たちは自然へ戻ったかに見えました。しかし本作では、火山噴火によって恐竜が再び絶滅の危機に直面し、世界は次の問いを突きつけられます。
「人間が復活させた生命を、私たちは守るべきなのか」
この問いが物語の中心に据えられ、シリーズは“パークの物語”から“地球規模の共存の物語”へと大きく舵を切ります。
『ジュラシック』シリーズ
全体目次(総括⇒第1回〜最終章)
- 🦖 ジュラシック映画シリーズ総括編 ― 30年の進化をたどる「深化の系譜」 ―
- 「ジュラシック・パーク」が変えた映画の未来 ── 恐竜が“現実”になった日
- 「ジュラシック・パーク」/『ロスト・ワールド』が示した続編の深化──恐竜の成長と野生を描く
- 「ジュラシック・パーク III」が突きつけた対峙──恐竜と最も向き合った物語
- 「ジュラシック・ワールド」|ついに開園した夢と、失われた安全弁
- 「ジュラシック・ワールド」/『炎の王国』|恐竜と人間の“倫理”がぶつかる転換点
- 「ジュラシック・ワールド」最終章/『新たなる支配者』|人間は自然を支配できるのか
作品データ
- 公開年:2018年
- 監督:J・A・バヨナ
- 主なキャスト:クリス・プラット、ブライス・ダラス・ハワード
- 位置づけ:『ジュラシック・ワールド』三部作の第2作
- キーワード:生命倫理/共存/人間の傲慢
あらすじ
島の火山噴火と恐竜救出作戦
かつて『ジュラシック・パーク』と『ジュラシック・ワールド』が建設されたイスラ・ヌブラル島。その島の火山が再び活動を始め、恐竜たちは絶滅の危機に追い込まれます。 クレアは恐竜保護団体の一員として救出作戦に参加し、オーウェンもブルーを救うために島へ向かいます。しかし、彼らが信じていた“救出”は、実はもっと別の目的を隠していました。
裏に潜む“恐竜ビジネス”の陰謀
表向きは「恐竜を救うための作戦」でしたが、実際には恐竜を兵器として売買する計画が裏で進行していました。 救出された恐竜たちは保護されるどころか、闇オークションへと運ばれ、金と権力のために利用されようとしていたのです。
舞台は屋敷へ ― サスペンス劇へ転換
物語は島のスペクタクルから一転し、恐竜たちが運び込まれた屋敷を舞台にした密室サスペンスへと変貌します。 そこで明らかになる陰謀、そしてメイジーの出生にまつわる秘密。 最終的に下される“ある選択”が、恐竜と人間の未来を大きく変えることになり、シリーズは新たなフェーズへと突入します。
本作の核心テーマ ― 恐竜と人間の“倫理”
恐竜は「守るべき生命」か「危険な存在」か
火山噴火を前に、世界は二つの立場に分かれます。
- 保護すべき:人間が復活させた生命に責任がある
- 放置すべき:危険な存在を世界に放つべきではない
クレアは前作で“恐竜を資源として扱っていた人物”から、“生命として尊重する人物”へと大きく変化します。 この価値観の変化が、物語全体の軸となっています。
もしあなたがこの世界の住人だったら、恐竜を救いますか? それとも自然に任せますか。
遺伝子操作と生命倫理 ― インドラプトルの象徴性
本作の新恐竜インドラプトルは、遺伝子操作によって生み出された“兵器としての恐竜”。
ここにはシリーズが一貫して問い続けてきたテーマが凝縮されています。
- 科学の暴走
- 生命を商品化する危険性
- 人間の欲望が生む“新たな怪物”
インドラプトルは、恐竜そのものよりも“人間の傲慢”を象徴する存在です。
メイジーという存在が示す未来
メイジーの出生の秘密は、恐竜の遺伝子操作と同じ文脈にあります。 彼女自身が「人間が生命を作ることの是非」を体現しており、 そして彼女の“ある決断”が、恐竜と人間の未来を大きく変えることになります。
映画としての見どころ
島パート ― 感情を揺さぶるスペクタクル
火山噴火の迫力はシリーズ屈指。 しかし最も心に残るのは、ブラキオサウルスが煙の中に消えていく名シーンです。
- 恐竜の“痛み”
- 人間の“責任”
- 失われていく生命の儚さ
バヨナ監督の感情演出が最大限に発揮されています。
屋敷パート ― ホラー×サスペンスの融合
後半は一転して、閉ざされた屋敷でのサスペンス劇へ。 インドラプトルの影の使い方や静寂の演出は、まるでゴシックホラーのよう。 シリーズの中でも異色のパートで、緊張感が途切れません。
音楽・映像・演出の進化
- ウィリアムズのテーマを継承しつつ、より“暗い”音楽へ
- 島の明るさ → 屋敷の暗闇という色彩の対比
- シリーズの“陰”を強調する映像美
視覚・聴覚の両面で、シリーズの新たな方向性を示しています。
シリーズ全体の中での位置づけ
パークもの → 地球規模の物語へ
恐竜が“外の世界”に出たことで、物語は完全に新しいフェーズへ。
次作『新たなる支配者』への必然的な流れ
本作のラストがなければ、次作のテーマである“共存の未来”は成立しません。
補助コラム
J・A・バヨナ監督の演出スタイル
恐怖と哀しみを同時に描く独特の演出が、本作の屋敷パートで最大限に発揮されています。
恐竜保護と現実の動物倫理
絶滅危惧種保護、動物園の是非、遺伝子操作など、現実の議論と密接にリンクしています。
ブルーが象徴する“恐竜との関係性”
ブルーは、恐竜が“ただの脅威”ではなく、感情を持つ存在であることを象徴しています。
まとめ ― 『炎の王国』が残した問い
『炎の王国』は、シリーズの価値観を根本から変えた作品です。
- 恐竜と人間は共存できるのか
- 人間が作り出した生命に責任はあるのか
- 科学の進歩はどこまで許されるのか
これらの問いは、次作『新たなる支配者』へと受け継がれ、シリーズの最終的な結論へとつながっていきます。

ブラキオサウルスが煙の中に消えていく場面は、何度見ても胸が締めつけられます。 恐竜という“かつて存在した生命”が、再び人間の都合で失われていく姿を前にすると、 私たちは本当に彼らを救う資格があるのか、静かに問いかけられているように感じました。
