
電気通信主任技術者とはどんな国家資格なのか?
通信系の資格を調べていると必ず目にする名前ですが、 具体的な役割や、工事担任者との違いまでは知られていないことが多いです。
まずはこの記事の入り口として、 電気通信主任技術者とは何を目的とした資格なのか その基本から整理していきます。
電気通信主任技術者とは ― 通信設備の管理を担う資格
電気通信主任技術者は、電気通信事業者が設置する一定規模以上の電気通信設備について、 工事・維持・運用を適切に行うために必要とされる資格です。
インターネットや電話といった通信サービスは、 光ケーブル、交換設備、伝送装置など、多くの設備によって支えられています。 電気通信主任技術者は、こうした事業者側の通信設備を対象とする資格であり、 通信インフラの根幹を支える役割を担っています。
利用者側ではなく「事業者側」の設備を扱う資格
電気通信主任技術者が対象とするのは、 通信事業者が設置・管理するネットワーク設備です。
- 光ケーブルやメタルケーブル
- 交換設備
- 伝送装置
- 無線通信設備
- 監視・制御システム
これらは、通信サービスを提供するための基盤となる設備であり、 一般の利用者が直接触れることはほとんどありません。
主任技術者は、こうした大規模かつ社会的影響の大きい設備を扱う資格である点が特徴です。
現場作業ではなく「管理」を担う立場
電気通信主任技術者は、 実際にケーブルを接続したり、機器を設置したりする作業者ではありません。
通信設備が、
- 適切な構成になっているか
- 安全に運用できる状態か
- 継続的にサービスを提供できるか
といった点を全体的な視点で管理する立場にあります。
この「現場作業ではなく管理を担う」という点が、 他の通信系資格との大きな違いです。
資格の種類は設備の違いによって分かれる
電気通信主任技術者は、管理する設備の種類によって次の2つに分かれています。
- 伝送交換主任技術者
- 交換設備や伝送路設備、無線通信設備など
- 通信システムの中枢となる設備を対象とする
- 線路主任技術者
- 光ケーブルやメタルケーブルなどの外部線路設備
- 通信回線を物理的に構成する設備を対象とする
どちらも通信インフラを支える重要な資格ですが、 担当する設備の領域が異なるという点を押さえておくことが大切です。
電気通信主任技術者に求められる役割と責任
電気通信主任技術者は、通信設備を扱う資格の中でも、 法律に基づいて責任を負う管理者として位置づけられています。 第1章で整理した「資格の全体像」を踏まえ、ここではその中身をもう一段深く見ていきます。
電気通信事業法に基づく選任義務
電気通信事業法では、一定規模以上の電気通信設備を設置する事業者に対し、 電気通信主任技術者を選任することが義務付けられています。
これは、通信設備が社会インフラとして重要な役割を担っており、 設備の管理を特定の責任者に明確にさせる必要があるためです。
主任技術者は、事業者の中で 「この設備の管理について責任を持つ立場」として選任されます。
工事・維持・運用を監督する立場
主任技術者の役割は、通信設備の工事・維持・運用が 法令や技術基準に適合しているかを管理・監督することです。
具体的には、
- 工事内容が技術基準に沿っているか
- 設備が安全に運用できる状態にあるか
- 維持管理が適切に行われているか
といった点を確認し、必要に応じて是正を指示します。
現場で作業を行うのではなく、 設備全体を俯瞰して判断する立場である点が特徴です。
通信設備の保安を確保する責任
通信設備に障害が発生すると、 利用者や社会全体に大きな影響を与える可能性があります。
そのため主任技術者には、
- 障害の発生を未然に防ぐための管理
- 障害発生時の迅速な対応や復旧の指揮
- 再発防止に向けた対策の検討
といった保安確保の責任が求められます。
通信の安全性と安定性を守ることは、 主任技術者の重要な役割のひとつです。
技術と法律の両面から判断する資格
電気通信主任技術者に求められるのは、 単なる技術知識だけではありません。
- 電気通信設備の構造や仕組み
- 電気通信事業法や関連する技術基準
- 法令に照らした適切な判断
といった、技術と法律の両面を踏まえた視点が必要になります。
試験で法規が重視されているのも、 主任技術者が「法律に基づいて設備を管理する立場」であることを反映しています。
管理者としての電気通信主任技術者
電気通信主任技術者は、 通信設備の最前線で作業を行う技術者ではなく、 設備全体の安全性と信頼性を担保する管理者です。
この管理者としての役割があるからこそ、 主任技術者は業務独占資格として位置づけられ、 事業者に選任が義務付けられています。
電気通信主任技術者と工事担任者の違い
電気通信主任技術者と工事担任者は、どちらも通信分野に関わる資格であり、 名前や法律との関係から混同されやすい資格です。
しかし実際には、担当する設備や役割が大きく異なる資格であり、 それぞれが異なる立場から通信インフラを支えています。
混同されやすい理由
この2つの資格が混同されやすい理由として、次の点が挙げられます。
- どちらも電気通信事業法に関係している
- 通信設備を扱う資格である
- 国家資格である
一見すると似た資格に見えますが、 実際には「どこを」「どの立場で」扱うかがまったく異なります。
担当する設備の違い
最も大きな違いは、担当する設備の範囲です。
電気通信主任技術者が対象とするのは、 通信事業者が設置・管理する事業者側の通信設備です。
- 交換設備
- 伝送装置
- 無線通信設備
- 光ケーブルなどのネットワーク設備
一方、工事担任者が対象とするのは、 利用者側の端末設備です。
- 電話機
- FAX
- ONU
- ルータ
- 建物内配線
このように、ネットワークの「内側」と「外側」で 担当領域が明確に分かれています。
役割の違い ― 管理と工事
役割の面でも、両者にははっきりとした違いがあります。
電気通信主任技術者は、 通信設備の工事・維持・運用が法令や技術基準に適合しているかを 管理・監督する立場です。
一方、工事担任者は、 端末設備を通信回線に接続するための 実際の工事を行う技術者という位置づけになります。
- 主任技術者:管理・監督を行う
- 工事担任者:接続工事を行う
この違いを押さえると、両者の役割が理解しやすくなります。
法律上の位置づけの違い
法律上の扱いにも違いがあります。
電気通信主任技術者は、 一定規模以上の設備を持つ事業者に対して 選任が義務付けられている資格です。
一方、工事担任者は、 端末設備の接続工事を行う際に その工事を実施するために必要な資格として位置づけられています。
どちらも法律に基づく資格ですが、 求められる役割と責任の性質が異なります。
上下関係ではなく、役割の違い
電気通信主任技術者と工事担任者は、 どちらが上、どちらが下という関係ではありません。
- 主任技術者:事業者側設備の管理者
- 工事担任者:利用者側設備の工事担当者
それぞれが異なる領域を担当し、 通信サービスを成り立たせるために欠かせない存在です。
主任技術者を取得してから工事担任者を目指すメリット
電気通信主任技術者と工事担任者は、 どちらも電気通信分野に関わる国家資格ですが、 取得する順番によって学習効率やメリットに違いが出る資格でもあります。
中でも、 主任技術者を取得してから工事担任者試験を受けるルートは、 制度面・学習面の両方から見て、非常に合理的な選択と言えます。
科目免除により試験負担を大きく減らせる
主任技術者(伝送交換主任技術者または線路主任技術者)の資格を保有している場合、 工事担任者試験では一部の科目が免除されます。
免除される科目
- 電気通信技術
- 端末設備の技術
これらは、通信の基礎理論やネットワーク構成、 端末設備や接続方式などを扱う専門技術科目であり、 主任技術者試験で学んだ内容と重なる部分が多いため、免除の対象となります。
免除されない科目
- 電気通信事業法
- 端末設備等規則
- 工事担任者に関する法規
そのため、主任技術者を取得している場合、 工事担任者試験では法規科目を中心に対策すればよいケースが多くなり、 試験勉強の負担を大幅に軽減できます。
主任技術者で身につく「全体を見る知識」が活きる
主任技術者で求められるのは、 通信ネットワーク全体を一つの仕組みとして理解する知識です。
たとえば、
- 端末から送られた信号が
- どの設備を通り
- どのような経路で相手先まで届くのか
- その途中でどんな装置や回線が使われているのか
といった流れを、 個々の装置ではなく全体の構成として把握する視点が求められます。
これは、 「この設備はネットワーク全体の中でどんな役割を持っているのか」 を説明できる知識とも言えます。
工事担任者の学習が理解をさらに深める
工事担任者では、
- 電話機やルータなどの端末設備
- 回線終端装置との接続
- 具体的な工事方法や技術基準
といった、現場に近い具体的な知識を学びます。
主任技術者で 通信ネットワーク全体の仕組みを理解したうえで、 工事担任者として端末接続や工事を学ぶことで、
- なぜこの工事が必要なのか
- なぜこの技術基準が定められているのか
といった点が理解しやすくなります。
知識が断片的にならず、 通信ネットワークを立体的に理解できるようになる点は、 この取得順ならではのメリットです。
管理と現場、両方の視点を持てる強み
主任技術者と工事担任者の免状を両方持つことで、
- 工事内容を理解したうえで設備を管理できる
- 管理の意図を理解したうえで工事を考えられる
- 管理と工事の橋渡し役になれる
といった強みが生まれます。
通信分野では、 管理だけ、工事だけではなく、 両方の立場を理解している人材が求められる場面も少なくありません。
効率的で無駄のない資格取得ルートとして
主任技術者を取得していれば、 工事担任者試験では科目免除を活用でき、 学習負荷を抑えながら次の資格に挑戦できます。
- 制度的に無駄がない
- 学習内容が自然につながる
- 将来の選択肢が広がる
こうした点から見ても、 主任技術者 → 工事担任者という取得順は、 非常に効率的で合理的な資格取得ルートだと言えるでしょう。
両方の免状を取得しても損になることはなく、 むしろ相互に活きる組み合わせとして、 前向きに検討する価値のある選択です。
電気工事士を追加することで、現場の見え方が変わる
通信設備に関わる資格は、それぞれ単独でも意味を持ちますが、 実務の現場では一つの資格だけで完結する場面は多くありません。
通信設備の管理、通信工事、電気工事は、 制度上は別々の資格で区分されていますが、 現場ではこれらが連続した一つの作業として進んでいきます。
ここに電気工事士の免状を追加することで、 通信設備を扱う際の見え方や考え方が大きく変わってきます。
通信設備は電源があって初めて成立する
通信機器は、回線がつながっているだけでは動作しません。 設置場所の電源状況や配線ルート、分電盤の構成など、 電気設備としての条件が整って初めて、通信設備として機能します。
電気工事を扱えるようになることで、 通信機器の設置や構成を考える際にも、 電源や配線を前提とした現実的な判断ができるようになります。
電気工事を「後工程」にしなくて済む
電気工事士の免状がない場合、 通信工事と電気工事はどうしても分断されがちになります。
一方、電気工事を追加することで、
- 通信機器の設置位置
- 電源の取り回し
- 配線ルートの確保
といった点を、最初から一体として考えられるようになります。
その結果、 後から電気工事が必要になるといった手戻りを減らし、 作業全体をスムーズに進めることができます。
主任技術者・工事担任者の知識がより実務に近づく
主任技術者として通信設備全体を管理する視点、 工事担任者として通信回線と端末設備を接続する知識に、 電気工事の理解が加わることで、
- 現場で何が必要になるのか
- どこに制約が生じやすいのか
- 管理上、どこを押さえるべきか
といった点を、より具体的に捉えられるようになります。
机上の構成や理論だけでなく、 実際の配線や電源状況を踏まえた判断ができるようになる点は、 実務において大きな違いになります。
電気工事を追加するという選択
電気工事士の免状を追加することは、 単に作業範囲を広げるという意味だけではありません。
通信設備を、 「通信だけ」「電気だけ」と分けて考えるのではなく、 一つの設備として捉えられるようになることが、 最大の変化と言えます。
資格を単体で考えるのではなく、 自分の立場や関わり方に応じて組み合わせていくことで、 実務における理解や判断の質は確実に高まっていきます。
電気通信主任技術者は、現場全体をまとめて管理したい人に向いている資格
電気通信主任技術者は、 通信分野の資格の中でも「管理」を担う立場の資格です。
現場で直接工事を行う資格ではありませんが、 工事担任者や電気工事士と組み合わせることで、 通信設備の現場を部分ごとではなく、一つの流れとして把握し、管理できる立場になります。
通信設備を全体の流れとして理解したい人に向いている
電気通信主任技術者に求められるのは、 個々の機器や作業内容だけを見ることではありません。
- 端末からどの設備を通って通信が行われているのか
- それぞれの設備がどんな役割を持っているのか
- 工事や変更が設備全体にどんな影響を与えるのか
といった点を、 通信設備を一連の仕組みとして理解する視点が求められます。
通信設備を点ではなく流れとして捉えたい人にとって、 主任技術者は相性の良い資格と言えます。
工事担任者と組み合わせることで通信工事まで把握できる
工事担任者は、 通信回線と端末設備を接続するための資格です。
主任技術者に工事担任者の知識が加わることで、
- 現場でどのような通信工事が行われているのか
- 技術基準に沿った接続がされているか
- 工事内容が設備全体にどう関わるのか
を、管理する立場として具体的に理解できるようになります。
現場任せにするのではなく、 工事の内容を理解したうえで管理できる点は、大きな強みです。
電気工事士を組み合わせることで、現場の状況を踏まえた管理ができる
さらに電気工事士の免状を組み合わせることで、 通信設備を回線だけでなく、電源や配線を含めた設備全体として管理できるようになります。
通信機器は、 回線がつながっているだけでは機能せず、 安定した電源や適切な配線があって初めて正常に動作します。
電気工事士の知識があることで、
- 電源配線の構成
- 分電盤まわりの状況
- 配線ルートや設置上の制約
といった点を踏まえた判断が可能になります。
その結果、 通信と電気を切り分けて考える必要がなくなり、 現場で実際に何が行われているのかを理解したうえで管理できる立場になります。
すべての人に必要な資格ではないが、管理を担うなら強力な軸になる
電気通信主任技術者は、 現場作業だけを行いたい人にとって、必須の資格ではありません。
しかし、
- 通信設備を全体の流れとして理解したい
- 現場を分断せずにまとめて管理したい
- 通信工事と電気工事の両方を踏まえて判断したい
と考える人にとっては、 工事担任者や電気工事士と組み合わせることで、 現場をまとめて管理できる強力な軸となる資格になります。
自分の立場や将来像に合わせて考える
資格は、 取ること自体が目的になるものではありません。
どの資格を、 どの順番で、 どのように組み合わせて活かすかによって、 実務での意味は大きく変わります。
電気通信主任技術者は、 通信設備を理解し、現場をまとめて管理するための基盤となる資格です。 自分がどの立場で通信分野に関わりたいのかを考えたうえで、 工事担任者や電気工事士と組み合わせていくことで、 より実務に即した形で活かすことができます。

インフラ基盤やサーバー、ネットワークの構築業務では、 通信だけでなく電源や配線まで含めて考える必要があります。
3つの免状を持っていたことで、 現場全体を一つの流れとして捉えながら判断できたことは、 実務上とても役立っていました。
